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細菌による主な感染症

【 ペスト 】
三つの臨床病型がある。

  1. 腺ペスト;ヒトのペストの80~90%がこの型である。潜伏期は2~7日。急激な高熱、頭痛、悪寒、倦怠感、筋肉痛、嘔吐などの強い全身症状と鼠径部、腋窩、頸部のリンパ節腫脹がみられ、それがこわれて膿瘍が形成される。
  2. 敗血症ペスト;ショック症状、汎発性血管内凝固症候群に引き続き、手足の壊死、紫斑、昏睡がみられる。約100%の頻度。
  3. 肺ペスト;高熱、激烈な頭痛、嘔吐、呼吸困難、泡沫上の鮮紅色の血痰などが認められる。

【 細菌性赤痢 】
血清学的にS.dysenteriae(A群)、S.flexneri(B群)、S.boydii(C群)、S.sonnei(D群)の4型がある。発熱、悪寒、全身倦怠感で発症し、1~2日後から水様性下痢、腹痛、膿粘血便、しぶり腹などの症状が出現する。極期は膿粘血や血液のみを少量頻回に排出する。潜伏期は、通常1~3日である。

【 コレラ 】
病原体は血清型O1型とO139型の2種類である。激しい下痢と嘔吐で発症する。下痢は水様性から特徴的な「米のとぎ汁」と形容される無臭できわめて大量の白色水様便となる。発熱、腹痛、血便は本来みられない。大量の下痢による水分喪失のために、脱水、循環器障害、無尿、低カリウムによる腓腹筋や大腿筋の痙攣がみられる。潜伏期は、通常1~2日である。

【 腸チフス・パラチフス 】
感染すると持続する高熱がみられる。比較的徐脈(高熱のわりには脈が少ない)、バラ疹、脾腫が三主徴である。腸出血は危険な合併症である。潜伏期は、通常1~3週間である。

【 ジフテリア感染症 】
本菌のだす外毒素による心筋や腎の障害、神経麻痺などの合併、後遺症も多い。炎症局所によって、咽頭、喉頭、鼻腔、眼、陰門、皮膚、中耳ジフテリアとよばれる。咽頭ジフテリアの重症型で進行性のものを特に悪性ジフテリアとよび、予後は悪い。発熱、偽膜、犬吠様咳を三主徴とする。

【 腸管出血性大腸菌感染症 】
1982年米国においてハンバーガーによる食中毒の原因菌としてE.coli O157:H7が報告され、広く注目されるようになった。他にO26、O145、O111などがある。下痢(血便)と激しい腹痛が主要症状である。典型的な症例では最初水様便で血液を少量認める程度であるが、やがて鮮血便を排出するようになる。嘔気、嘔吐、悪寒を訴えた症例もあるが、38℃以上の発熱は稀である。溶血性尿毒症を伴う例もある。

【 劇症型溶血性連鎖球菌 】
「人食いバクテリア」として恐れられた。咽頭炎、創傷感染、手術創感染などに引き続いて、突然の高熱、四肢の筋肉痛、嘔吐、下痢、血圧低下などの敗血症性ショックを呈する。早期に播種性血管内凝固症候群(DIC)から肝不全、腎不全、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)などの多臓器不全を起こして死亡する。

【 炭疽 】
3型に分けられる。

  1. 皮膚炭疽;局所の発赤、浮腫についで水泡を形成し、黒褐色の痂皮(無痛性の非化膿性膿疱)を形成する。所属リンパ節の腫大や敗血症がみられる。
  2. 腸炭疽;悪心、嘔吐、腹痛、血便などの腸感染症症状(出血性腸炎)を起こす。咽頭部感染では咽頭炎、嚥下性障害、発熱、頸部リンパ節腫脹がみられる。
  3. 肺炭疽;インフルエンザ様症状からリンパ節腫脹、縦隔炎から急激な呼吸困難、チアノーゼ、意識障害、昏睡をきたし、死に至る。髄膜炎もみられる場合がある。 

【 破傷風 】
受傷部位の不快な緊張感と発熱(第1期)で発症し、徐々に開口障害、呼吸困難、胸痛、悪心・嘔吐、腹痛、顔面筋痙攣が出現し、数日間持続する。この間、意識は清明(第2期)である。続いて、全身骨格筋強直性痙攣が反復出現し、1~3週間持続(第3期)する。窒息死をまぬがれれば徐々に回復(第4期)する。病原体は、破傷風菌(嫌気性有芽胞グラム陽性桿菌)で、土壌中の菌が外傷部位に感染し、毒素を産生する。嫌気性菌であるので、深い刺し傷の中で増殖する。 

【 ブルセラ症 】
ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌなどにも感染が見られる人畜共通感染症で、アフリカ、中東中南米など広く分布している。発熱、発汗、脱力感、体重減少、リンパ節腫脹などが見られる。発熱は間欠的で波状熱とも呼ばれる。病原体は細胞内寄生細菌であるブルセラ属の細菌で、この中の4種が人に感染を起こす。感染動物との直接接触、乳製品・肉などによる経口・経気道・経皮感染による。動物では流産が見られる。 

【 レジオネラ症 】
1976年米国フィラデルフィアでの肺炎の集団発生で発見され、その後、世界中から 症例の報告がなされた。在郷軍人病とも言われる。細菌性肺炎の症状を呈する。すなわち、発熱、咳、痰、胸痛、呼吸困難などがみられる。軽症例ではポンティアック熱と呼ばれるカゼ程度の症状ですむメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症βラクタマーゼ産生の黄色ブドウ球菌が原因菌。病院内で増え、医療スタッフの手指や医療用器具を介して、入院患者に広まる。抵抗力の弱まった患者にMRSAによる肺炎、敗血症、腸炎が多発する。症状は感染部位によって固有の感染症状が見られる。すなわち、発熱、頭痛、倦怠感に加えて、重症となればショック状、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全を合併して死亡する。

【 髄膜炎菌性髄膜炎 】
2~4日の潜伏期のあと、急激に発症する。悪寒・戦慄を伴う高熱、激しい頭痛、悪心、嘔吐、痙攣や意識障害をきたす。項部(うなじ)硬直がみられる。軽症だと数日で自然軽快するが、劇症例では意識障害、皮下出血、痙攣をきたし、数日で死亡する。病原体は髄膜炎菌。患者あるいは咽頭保菌者からの咳による飛沫感染で感染する。本菌は時として、健康者でも咽頭や鼻腔に保有している。

【 薬剤耐性緑膿菌感染症 】
MRSAと同様、院内感染菌として重要。病院内には種々の基礎疾患を有する易感染状態の患者が多いので、多くの抗菌薬に耐性を獲得した細菌感染症が増加する。その代表的なものがMRSAと緑膿菌である。カルバペネム、アミカシンおよびキノロン系抗菌薬全てに耐性を示すものを指す。

【 野兎病 】
鳥類や哺乳類にも感染がみられる人畜共通感染症で、北緯30度以上の北半球に広く分布し、日本では東北・関東地方が多発地帯とされる。3~7日間の潜伏期の後、悪寒・戦慄、頭痛、筋肉痛などの風邪様症状で発症する。局所の表在リンパ節腫脹と痛み、特に腋下のリンパ節腫脹が多い。4~5日後、いったん解熱した後、再び高熱が持続する。病原体は野兎病菌。哺乳類、鳥類の剥皮からの接触感染あるいは動物に噛まれたり保菌動物の調理によって汚染された器具から他の食材が汚染されての経口感染などがある。

【 鼠咬症 】
ネズミのほかマウス、ラット、リス、イタチ、ネコによるひっかき傷から感染、発症する。ネズミによる咬傷部はいったん治癒し、その1~3週間後、突然の高熱、頭痛、嘔吐、筋肉痛で発症する。噛まれた傷口も発赤、腫脹、疼痛をきたし、この部位から暗赤紫色の丘疹が全身に広がる。所属リンパ節の腫大が見られる。二つの病原体による感染症である。鼠咬症スピリルムというらせん菌とストレプトバチルスという細菌が原因病原体で、おもに、ネズミに噛まれることで感染する。ネズミの排泄物で汚染された水や牛乳からも感染する。人から人への感染はない。  

【 表在性真菌症 】
真菌(カビ)による感染症のうち、感染部位が皮膚の表面、爪、毛髪、口腔や膣、食道粘膜に限局するものをいう。皮膚糸状菌症(白癬、いわゆる水虫)、皮膚や粘膜のカンジダ症、皮膚マラセチア症などがある。皮膚粘膜カンジダ症には、乳児寄生菌性紅班(オムツかぶれに引き続いて起こるあせも様の紅班)、カンジダ性間擦疹(多汗症、糖尿病、免疫抑制剤による治療を受けている人にみられる)、カンジダ性指間糜爛症(水仕事をする人の指間に出来る発疹、糜爛)、口腔カンジダ症(栄養不良の乳幼児、抗生物質長期服用者、高齢者などの口腔内や舌の表面にみられる白帯)、膣カンジダ症(外陰部や膣の強いかゆみと発赤、腫脹、小水疱形成がみられる)などがある。 

【 深在性真菌症 】
主に内臓、中枢神経系、皮下組織、骨、関節が侵される真菌感染症をいう。本来真菌の病原性は低く、先行する基礎疾患に二次的に感染する場合が多い。近年免疫能が低下した患者の増加によって、深部真菌症は増加している。カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、ムコール症などがある。 

【 バルトネラ症敗血症 】
病原菌はBartonella bacilliformisで、南米アンデス地方にみられる風土病である。皮膚や粘膜に腫瘍状の丘疹が見られる発疹型(ペルー疣病)と発熱と溶血を伴う致命率の高い発熱型(オロヤ熱)の2病型に分けられる。発熱型では菌は赤血球に感染し、貧血、発熱、関節痛などを起こす。サシチョウバエ属スナバエによって伝播される。わが国ではみられない。

【 敗血症 】
体内にある感染巣の原因菌が血液中に侵入し、血液を介してさらに他の部位に転移巣を作り、重篤な全身所見を呈した状態をいう。高熱、悪寒、戦慄を伴い、時には細菌の内毒素によりショックに陥ることがある。 

【 結核 】
ヒト型結核菌によって起こる感染症で、長年わが国の死因の第1位を占めていたが国民生活の向上と治療薬の発達によりかなり改善された。しかし近年、エイズとの関わりや集団感染からの発生などが増えており増加の傾向にある。WHO(世界保健機関)は平成5(1993)年に結核の非常事態宣言を発表し、各国に結核対策強化を求めている。結核の感染は患者の咳の折に飛散する飛沫に混じっている結核菌を吸引することにより肺に起こる。症状は咳、痰、血痰、全身倦怠感などである。ほとんどが肺疾患であるが、リンパ節結核、骨、関節結核、腎・尿路結核、腸結核など を起こすこともある。 

【 バイコマイシン耐性球菌 】
バンコマイシン(MRSAの治療に用いられる抗生物質)に耐性を獲得した腸球菌。腸球菌は本来ヒトや動物の腸内に常在する菌で、健康な人が保菌していても感染症を起こすことはない。問題となるのは免疫機能が低下した患者に対して日和見感染症や術後感染症、カテーテル性敗血症を引き起こす場合であり、重篤な感染症を起こし死亡することもあり、院内感染菌として注目されている。バンコマイシン耐性遺伝子(VanA、VanBなど)を保有している。 

【 淋菌感染症 】
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による性行為感染症の一種。急性化膿性尿道炎の他、隣接性器を侵す。ときには血液中に侵入して播種性淋菌感染症となり、関節炎、心内膜炎を起こすこともある。また、直腸炎、咽頭炎、出世時の母体からの感染による新生児結膜炎を起こすことがある。 

【 ペニシリン耐性肺炎球菌 】 
従来は有効であった抗生物質ペニシリンに耐性を獲得した肺炎球菌のことをいう。近年その割合は増加しており、耐性菌と感受性菌の判別が重要になっている。 肺炎球菌は主に喀痰、咽頭、耳漏、扁桃などから分離され、呼吸器感染症や耳鼻科領域感染症の重要な起因菌とされており、乳幼児の化膿性髄膜炎、小児の中耳炎、肺炎、高齢者の肺炎などの原因になる。

【 細菌性髄膜炎 】
細菌による急性の髄膜の炎症をいう。死亡率の高い重篤な疾患である。症状は発熱、頭痛、嘔吐を呈する。原因菌については、上気道感染症を起こす肺炎球菌やインフルエンザ菌による内因性感染や母体の産道常在菌(大腸菌などの腸内細菌や、B群連鎖球菌)による新生児への垂直感染によることが多く、また頭部外傷や脳外科手術などの場合に外因性に菌が侵入することより発症することもある。また結核菌病巣から広がる結核性髄膜炎もある。