私たち生物の遺伝情報は、ゲノムと言われる設計図の中に収められています。
ヒトや細菌のゲノムはDNAから構成されていて、DNAの最少単位は4種類の塩基(アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C))と呼ばれる物質で、
設計図の文字に相当します。一方、一部のウイルスではゲノムがRNAから作られています。
その場合、チミンの代わりにウラシル(U)という塩基が使われています。
この文字の数や並び方は、生物の種毎に決められているので、文字を読めばどの生物の設計図なのかが分かります。
現在、多くの生物種のゲノム情報がデータベースとして登録されているので、得られた文字(塩基配列)をデータベース内で検索すると、生物の種を特定出来ます。
ヒトでは31億文字、大腸菌では464万文字、ノロウイルスは約7千文字、新型コロナウイルスは3万文字あり、生物種によって文字の数(=ゲノムの大きさ)や並び方は異なります。
文字の並び方は、「意味を持つ単語」として並んでいる部分と、意味を持たない単なる文字として並んでいる部分が入り混じっています。
この「意味を持つ単語」にあたる部分が「遺伝子」です。微生物の種類によっては、「この菌は、必ずこの遺伝子を持っている!」と分かっている場合があります。
(例えば腸管出血性大腸菌は、必ずベロ毒素産生遺伝子を持っています。) その特徴を理解し、検出したい微生物が固有に持っている遺伝子をターゲットにすることで、目的とする細菌やウイルスだけを検出します。
その方法の一つがPCR法です。